病理学 解答

病理学

2002

                            病理学問題解説
                                          
91.
  a.  糖原病(VIIIa型を除くすべて)は常染色体性劣性遺伝疾患である。
     男性と女性の性細胞が受精して接合体(受精卵)を作る。受精卵は46本の染色体を持
     ち、その中で、44本22対が常染色体で、2本が性染色体である。接合体の中、同じ遺伝
     子を2個持つもの(AAまたはaa)をホモ接合体という。異なった遺伝子をもつもの(A a)を
     ヘテロ接合体という。この様に2個の対立遺伝子の中、1個の変異(ヘテロ)で病気が
     発現する場合を優性、2個の対立遺伝子の変異(ホモ)で病気が発現する場合を劣性と
     よんでいる。

   b. 血友病は伴性劣性遺伝疾患である。
   X性染色体上の遺伝子の変異により発現する病気である。

  c. フェニルケトン尿症は、常染色体性劣性遺伝疾患である。

  d. 家族性高コレステロ−ル血症は常染色体性優性遺伝疾患である。

92.
  a.胃癌は組織学的には大部分が腺ガンである。その発生は食塩の摂取量との関連があるとされている。
    
  b.アルファフエトプロテインは胎生期の肝細胞が産生するタンパクで、肝細胞ガンだけが生成すると
  考えられるから、転移癌では血中値は上昇しない。

  c. 喫煙により気管支上皮が扁平上皮化生を起こす。この結果、扁平上皮ガンは肺門部気管支系に多い。

  d. 大腸ガンは大部分は腺ガンであるが、その発生は食事との関連が大きい。

93.
  a. 心臓性浮腫は鬱血による浮腫で、特に、右心不全による静脈圧の上昇で、組織での
   水の出納バランスが崩れ、皮下や体腔に水がたまる。立位では下肢に浮腫をきたす。
   
  b. 急性腎炎では、高血圧や毛細血管圧の亢進により、全身の毛細血管の透過性が高ま
   り、浮腫をきたす。ネフロ−ゼ症候群の場合は、タンパクが尿から失われ、低タンパク
   血症をきたし、膠質浸透圧の低下で、浮腫が起こる。眼瞼部や頬部などの皮下から浮腫が始まる。
   
  c. クッシング症候群は、下垂体からの副腎皮質刺激ホルモン(ACTH)の分泌過剰により、
   副腎皮質機能亢進症をきたした状態をいう。栄養とは関係がない。
   
  d.炎症があればその部位の毛細血管の透過性が亢進するから、浮腫が起こる。

94.
  a.HIV感染症(エイズ)は免疫機能が低下するので、カリニ肺炎など日和見感染を起こしやすい。

  b. クラミジア感染症はクラミジアと呼ばれるリケッチャとウイルスの中間にある一種の細菌で、
   トラコ−マ、や第四性病を起こす。

  c. MRSA感染症とは、メチシリン耐性黄色ブドウ球菌による感染症で、殆どの抗生物質が効かないので、
   院内感染症として注目されている。

  d. C型ウイルス肝炎は血液感染で、A型ウイルス肝炎は経口感染である。

95.
  a. 糖尿病では全身の微小血管内皮下への血漿成分の侵入をきたす。腎糸球体毛細血管
   はその中でも好発部位である。基底膜の肥厚や結節状硝子様物質の沈着が著明で、メザ
   ンギウムの増殖と共に、結節性硬化像を呈する。腎糸球体硬化である。毛細血管の破壊
   は尿糖のみならず、タンパク尿をも呈する。

  b. 糖尿病性網膜症では、眼球網膜の毛細血管に瘤ができたり、出血がおこり、ひどく
   なると硝子体に出血が起こり、失明する。

  c. 糖尿病では動脈硬化が起こりやすく、血管腔を狭めて、虚血を来す。心臓の冠動脈
   での発症が高くなる。

  d. 糖尿病になると、エネルギ−源として脂肪が動員される。脂肪は肝で代謝され、
   ケトン体が血中に放出される。その結果、血液はアシド−シスになる。
病理学 2001 【解答と解説】 91. 答え:(5) (1) 常染色体劣性遺伝による。 (2) アフリカなどに見られるリンパ腫で、何らかの原因(ウィルスなど)により、第8染色体にある癌原遺伝子が、   第14染色体に転位することにより、発病する。 (3) 紫外線感受性の高い色素沈着を認める皮膚疾患で、紫外線による細胞のDNAの障害を修復する酵素の欠損が原因。 (4) 第21染色体が1本多いために起こる。 (5) ビタミンB12の欠乏に起因する貧血。 92. 答え:(4) (1) 凝固壊死は、細胞のタンパク質が凝固するものである。脳軟化症は、タンパク質が消化分解されて起こる融解壊死である。 (2) 融解壊死は、脳軟化症や膿瘍にみられる細胞のタンパク質が酵素により分解されて生じたものである。   結核の乾酪巣は、凝固壊死のひとつで、内部は無構造で、ヤギのチーズに似る。 (3) 壊死により、組織が崩壊した部分は、マクロファージで処理され、線維芽細胞などにより形成される肉芽組織により、   修復置換される。 (4) 細胞死には2つあり、1つは壊死で、もう1つはプログラム化されたアポトーシスがある。 (5) 壊死とアポトーシスでは、その起こり方に差があるので、形態学的には異なる。 93. 答え:(5) a.充血は、組織・器官内を流れる動脈性の血液量の増加による。 b.一般に、肺水腫をきたすのは左心不全の場合である。肺胞、肺間質内に血漿成分が貯留する状態を肺水腫という。   右心不全では、右心房に還流する下大静脈に強い影響があり、全身の皮下に浮腫をきたす。腹水もたまる。 c.肝硬変による門脈圧亢進は、門脈に流入する胃静脈を介して、側副循環路により、食道静脈に逆流して、食道静脈瘤を形成する。 d.出血や火傷で大量の体液が失われると、血圧降下と末梢循環血流量が減少し、ショックに陥る。末梢組織への酸素不足をもたらす。 94. 答え:(1) (1) 炎症の五徴は、白血球増多を加えず、機能障害を加える。 (2) この通りである。 (3) この通りである。 (4) この通りである。 (5) この通りである。 95. 答え:(3) (1) グルコース-6-ホスファターゼが先天的に欠損しているのを、フォン・ギールケ病という。 (2) 細胞の膜を構成するスフィンゴミエリンという脂質を分解するスフィンゴミエリナーゼの欠損により、   全身臓器の食細胞内にこの脂質が蓄積する。 (3) フェニルケトン尿症は、フェニルアラニン水酸化酵素が先天的に欠損しているものであるが、尿を放置しても黒変しない。 (4) この通りである。 (5) この通りである。
2000 病理学 模範解答 91−(1) 解説: a 心臓や腎臓では動脈は吻合がほとんどない。このような動脈を終動脈という。この動 脈が閉塞すると、酸素と栄養素がその支配組織に供給されなくなるので、そこの細胞は死 滅し、壊死を起こす。この場合の壊死は凝固壊死である。 b 梗塞は血管が詰まるか、細くなって血液が流れなくなるので、血栓や脂肪塊、空気な どの塞栓によることが多いが、動脈硬化で血管腔が狭窄あるいは閉塞すると起こる。動脈 硬化では血栓を伴いやすい。 c 出血性梗塞は梗塞部が出血を伴うもので、肺、小腸、脳に好発する。 d 貧血性梗塞は梗塞部が貧血調を呈するもので、終動脈によって栄養される臓器に起こ り、腎臓、脾臓、心臓、脳に好発する。原因は血栓症か血栓性塞栓症によることが多い。 e 脳の梗塞では、脳軟化症といわれるように、ドロドロに融ける融解壊死の形をとる。 92−(1) 解説:化生とは、ある方向に分化、成熟した組織がほかの性状をもつ組織に変わることを いう。 (1) ビタミンAの欠乏で上皮の化生がみられる。 (2) 慢性炎症があると、上皮に化生をきたしやすい。子宮頚部では、円柱上皮が扁平上 皮化生をきたす。 (3) 喫煙者では、気管支上皮が扁平上皮化生をきたす。 (4) 慢性胃炎では、胃粘膜上皮が腸上皮化生をきたしやすい。 (5) 乗馬の際にみられるように、絶えず刺激を体外から受けると、皮下の結合組織が骨 に化生することがある。 93−(3) 解説: (1) 胃癌細胞は、腹膜に播種性転移をすることがある。この際、女性では卵巣に転移す る。この卵巣転移癌をクルーケンベルグ腫瘍という。 (2) α-フェトプロテインは胎児期の肝細胞が合成し、血中に分泌するもので、肝細胞 癌で血中に高濃度にあらわれる。 (3) クッシング症候群は、副腎皮質からコルチゾールが過剰に分泌されると起こる。 副腎皮質の腺腫によるものが多い。ちなみに、下垂体腺腫による持続的ACTHの分泌に より、副腎皮質が刺激され、クッシング症候群を呈するのをクッシング病という。 (4) 副腎皮質の球状帯から分泌されるミネラルコルチコイドであるアルドステロンが過 剰に分泌されるために起こる病気で、副腎皮質の腺腫によるものである。 (5) 下垂体からの成長ホルモンの分泌過剰は巨人症をきたす。クレチン病は先天性に甲 状腺ホルモンの欠乏をきたした場合に起こる。原因は視床下部・下垂体からのTRH(甲 状腺ホルモン放出ホルモン)およびTSH(甲状腺刺激ホルモン)の分泌低下、甲状腺ホ ルモン合成障害などによる。 94−(3) 解説:浮腫の原因としては5つとも挙げられるが、低栄養の場合の浮腫は、血液中のタン パク質濃度が低い、すなわち、低タンパク血症の状態である。したがって、血漿膠質の浸 透圧が低下しているから、浸透圧の平衡を保とうとして、血液から微小血管壁を介して、 液性成分が血管外に出て、浮腫をきたす。 95−(5) 解説: a 連鎖球菌は細菌である。風疹はウィルスが原因である。 b マイコプラズマは細菌とウィルスの中間に属する病原菌で、間質性肺炎を起こす。オ ーム病は鳩の糞に含まれているクラミジアという細菌により発病するもので、肺炎を起こ す。 c 真菌症は真菌(カビ)により起こる病気で、主に、皮膚の疾患が多いが、ほかの臓器 も感染する。真菌にはカンジダが有名。菌交代現象とは、ある細菌類が抗生物質などで死 滅したあとに、日和見感染として真菌や薬剤耐性菌などが増殖することをいう。 d リケッチアは、発疹チブスやツツガムシ病などを起こす病原微生物で、細胞内でのみ 増殖可能である。ヒト毛細血管内皮細胞内で増殖する。間質性肺炎は起こさない。この肺 炎はマイコプラズマより引き起こされる。 e 赤痢アメーバは原虫性で、経口感染した後、大腸壁に住み着き、さらに、大腸より門 脈を通って肝臓に運ばれ、アメーバのタンパク分解酵素によって肝実質が破壊され、膿瘍 をつくる。
1999 91(1) 形成異常が起きる可能性がある(1)   92(3) 糖尿病性巨大児(b),母親からの糖供給が多いのでランゲルハンス島肥大(c)   93(4) アルコール中毒、チアミン欠乏など(4)   94(5) すべて正しい(5)   95(3) IgE抗体(c),IgG抗体の移行が顕著(d) 1998 91(4) 沈着が不良(4)   92(3) 悪性腫瘍と良性腫瘍が逆(1,2,4,5)   93(4) 門脈圧の亢進(4)   94(4) 輸血などによる非経口感染(4)   95(3) 抗原抗体反応(3) 1997 91(4) ふつう背景とはならない(4)   92(3) 栄養不足を除いては(3)   93(5) 胃ガン(5)   94(2) 漏出液ではなく侵出液(2)   95(5) すべて正しい(5) 1996 91(3) もとに戻る(3)   92(3) 低カルシウム血症のため副甲状腺の増生(3)   93(5) 例:エイズ(5)   94(1) グロブリンの増加(1)   95(1) 好酸球の増加(1) 1995 91(2) 細胞性免疫能の低下を伴う(2)   92(1) 男性に多い(1)   93(4) 銅代謝異常   94(4) 発ガン物質(4)   95(4) 増殖性と侵出性が逆 1994 91(5) 記載の原因が生じないか、または原因とはならない(5)   92(4) 最初に出るのは好中球、単球(4)   93(3) IV型(遅延型)の典型(3)   94(0) ポリプのガン化を高率でないと考えるなら(3)   95(2) 分化度が低く、異形性が高い(2) 1993 91(2) 主として好中球(2)   92(2) 膿瘍は肺、肝、骨、脳など至る所に起きる(2)   93(1) 見られる(1)   94(4) 脂質摂取と関係して増加しているのはコレステロール結石   95(3) 萎縮がもとに戻る(3) 1992 91(1) 種々の刺激による(1)   92(1) 内分泌性(1)   93(5) すべて正しい(5)   94(5) 化生とガンは密接に関係する(5)   95(2) 一定ではない(しかし、転移しやすい部位・組織がある)(2) 1991 91(4) 副腎皮質ホルモンは間葉系の発育を押さえ、抗生物質は宿主の代謝も阻害する(4)   92(5) グロブリン、フィブリノゲンの増加、アルブミンの減少(5)   93(1) 静脈と動脈が逆(1)   94(5) T細胞が主役(5)   95(5) 間質の多少ではない(5) 1990 11(5) 形質細胞は抗体生産細胞であって、監視役ではない(5)   12(0)   13(3) 回復することもある(3)   14(3) 過剰による甲状腺腫もある(3)   15(3) ビリルビン結石は黒褐色ではあるが、もろい(3) 1989 11(3) リパーゼも上昇(3)   12(4) 脂肪細胞における脂肪分解(4)   13(2) 萎縮した筋肉も仕事量が増えると肥大(2)   14(4) 造血細胞や腸粘膜細胞で高く、神経細胞では低い(4)   15(2) 器質化し十分ではないが血流が戻る(2) 1988 11(3) 米のとぎ水様便(3)   12(5) 形質細胞が抗体産生細胞(5)   13(1) 脂肪細胞内に蓄えられる(1)   14(5) 細小血管症により症状が起きる(5)   15(5) 閉塞性黄疸により肝細胞の変性、壊死(5) 1987 11(4) 種々の内因性の原因で起きる(4)   12(5) 心筋と神経細胞は再生能力がない(5)   13(2) 麻疹ウィルス(b) 流行性耳下腺炎ウィルス(d) つつがむし病リケッチア(e)   14(3) 慢性移行(3)   15(3) 失明する(3)