「水を飲んでも太る」という人がいますが、そういうことはありません。摂取エネルギーと消費エネルギーのインバランスが太る原因なのです。
しかし“太りやすい体質"は確かにあります。たとえば、生きるために最低限必要なエネルギー消費量の低い人(基礎代謝が低い)、食事を食べた後に出る熱の少ない人(食事性産熱が低い)、食物の消化吸収、利用効率の高い人、血中のインスリン濃度の高い人などがそうです。
さらに、大相撲の力士の2度食に見られるように1日3食でなく2食にすると太ります。食事回数が少なくなると、食間が延び飢餓状態が長くなるので、食物が入ってきたときに少しでも多く吸収して蓄えようとする適応現象が起こるためと考えられます。
母親が肥満の場合、子供も肥満になるケースが多く見られます。遺伝的な要素もありますがそれだけでなく、その家庭の生活習慣、食習慣なども問題になっていると思われます。
●知らず知らずに
からだを動かすことの嫌いな母親は、子供を外へ連れ出すことをあまりしないし、好き嫌いの多い母親をもつ子供は、種々の食品を食べることが不可能でしょう。また、栄養学に関心が少ない母親は、子供に甘いおやつばかり与えるかもしれません。ジュース類やペットボトルの飲み過ぎのほかに、常時お菓子、果物がテーブルの上にあり、好きなときにそれらを食べられる環境を作っている家庭もあります。
このように、知らず知らずのうちに、摂取栄養素の偏りや、食べ過ぎのような太りやすい家庭環境ができあがっています。これらの家庭はまず、どこに問題があるのかを見つけ出さなければなりません。
以上のような不健康と思われる食行動を改善するには行動療法が有効です。
この行動療法は、軽度肥満の人に特に有効で食事制限をすることなく、行動療法単独でかなりの減量効果が期待できます。その内容は、いつ、どこで、だれと、何をしながら、何を、どのくらい、何分で食べたかなどを調べ、問題となっている自分の食行動の異常を見つけ、それを是正していくというやり方で、肥満者に見られる食事時間の不規則、早食い、だらだら食い、ながら食い、ドカ食いなどを改める療法です。
●原則は負の状態に
また、成人病の危険因子の一つである肥満の治療は、食事などから体に入ってくる摂取エネルギーと活動することにより消費する消費エネルギーの差、つまりエネルギー出納を長期的かつ継続的に負の状態に保つことが原則です。
その方法として
(1)摂取エネルギーを制限する食事療法
(2)食行動を改める行動療法
(3)消費エネルギーを増加させる運動療法
これを併用するのが一般的なやり方です。しかし、食事療法のみ、あるいは運動療法単独ではそれぞれ欠点があり、三つの療法を併用して行うことが効果的です。
適切な減量スピードとして、アメリカスポーツ医学会は、運動とエネルギー制限を同時に用いた場合、週当たりの体重減少量は、450gから1kgの範囲内であることを推奨しています。極端なダイエットはかえって危険です。
飽食の時代の今日、ダイエットいわゆる肥満解消法が一つのブームを呼んでいます。ここでは、肥満に対する食事療法についてお話しましょう。肥満は、摂取エネルギーが消費エネルギーを長期間上回ったのが原因ですから、食事療法は摂取エネルギーを消費エネルギーより少なくし、体重を減らすことを基本とします。
それには、低エネルギー食療法や減食療法があります。低エネルギー食事療法は1日600-1000kcalを基準とし、入院して行う必要があります。減食療法は、1日1000-1500kcalを基準とします。日常生活を営みながら自宅でできますので、一般の肥満に最適な方法です。
●糖質は最低100g
摂取エネルギーが制限されると、タンパク質の体内での利用効率が低下して、筋肉などが減少しやすくなります。これを防ぐために、比較的多くのタンパク質が必要となります。1日に理想体重=22×身長(m)×身長(m)=の1kg当たり1.0-1.5gの確保が望まれます。たとえば、身長1.7mの人で、64-95gのタンパク質が必要なのです。
糖質は、体脂肪を完全燃焼させるためには不可欠です。不足すると脂肪の不完全燃焼であるケトン体が産生され、体に良くありません。糖質は、1日最低100g、ご飯315g(軽く茶わん2杯半)相当は取る必要があります。
●有用な植物性油
脂肪の摂取は、1日30g前後とし、動物性と植物性の割合を1体2ぐらいにします。これは、多価不飽和脂肪酸を多く含む植物油が、肥満者にみられる高脂血症の予防、改善に有用だからです。
また、ビタミンとミネラルは食事から必要量を取るのが原則です。それが困難な場合は、ビタミン剤を服用します。
食物繊維は、食物の胃内滞留時間を延長し、糖吸収を遅らせる効果があり、インスリン分泌を抑制し、脂肪合成を低下させます。食塩は、濃い味にすると食欲が亢進(こうしん)しやすいので制限します。
●長期間継続で副作用
最近、肥満症の治療法として注目されているのが、超低カロリー食による半飢餓療法です。超低カロリー食は、除脂肪組織の減少を抑える最少必要量のタンパク質とケトン体産生を抑制する最少量の糖質と、十分なビタミン、ミネラルが含まれているもので、1日240-420kcalまでの製品があります。
現在は、タンパク質源に質のよい卵白アルブミンや牛乳、大豆タンパク質などを用いていますので安全ですが、1970年代には、アメリカで60人の突然死を出しました。その理由は、質の悪いタンパク質であったため、必須(ひっす)アミノ酸が欠乏したからです。
超低カロリー食は、長期間継続すると脱毛、つめの変形、皮膚乾燥、寒がりなどの副作用が出てきます。したがって医師の管理下で行われなければなりません。
また、絶食療法も摂取エネルギー量をゼロにしますので、効果的に思われがちですが、ケトン体の増加、脂肪以外の筋肉などが減少し、不整脈、電解質異常、貧血、最悪の場合は突然死に至る危険があります。医師の厳重な管理がないととてもお勧めできません。
●減量は根気が一番
半飢餓療法も絶食療法も減量の後で体重が再び増加し、減量を長期間維持することが困難です。
食事療法を始めると、最初はおもしろいように体重が減少しますが、徐々に減少速度が落ちてきます。これは適応現象と呼ばれます。体に十分量のエネルギーが入ってこなくなり、体重が減ってくると、体は基礎体重を低下させ、吸収率を高め、体重を維持しようと適応するのです。
この時期に食事療法をやめてしまうと、体重は減量した期間より早く、なお一層増加します。体重の再増加をなくすには、根気よく継続することが大切です。
中村学園大学・健康増進センター(センター長・中村元臣教授)では、地域の方々を対象に3.5ヵ月を1コースとする肥満クリニックを開催。主に食事指導と運動療法を中心に、減量の長期間維持と体重のリバウンドを防ぐ行動療法も取り込んでいます。その結果、19人中、15人が5kg以上の減量に成功、2人は10kgも減量しました。「スリムな体を取り戻した」と大喜びです。その中で10kgの減量に成功した福岡市西区の主婦古閑涼子さん(43)の感想文を紹介しましょう。
●食べた分は運動
私が今日着ている洋服は10年前のものです。つい4ヶ月前までは、この洋服を着る日が来るなどとは夢にも思っていませんでした。
体重の増加は、何の努力も必要なく楽にできるものです。おいしいものを食べ昼寝をして、目が覚めるとまた食べる。私の人生から食べる事と寝る事を引いたら、何も残らない状態でした。あそこのケーキがおいしいと聞けば買いに、ランチはどこがおいしいと聞けば絶対に食べないと損をすると思ってました。
その生活を大きく変えました。諸先生方から次のような講義を受けました。
「焦らないでゆっくり続けなさい。継続が大切です」(せっかちの私にはつらいものがありました)
「食べなければやせられません」(食べたら太ると思っていました)
「食べた分は運動しなければいけません」(食事の前に歩くのが効果があるとは知りませんでした。
ダイエットは、これまで何回か挑戦したのですが、食べないでやせるという状態だったのでストレスがたまり、中断してはリバウンドで、前より太るという繰り返しでした。
●ゆっくり食べる
体がなんだかだるく眠たくて更年期かな、それとも-と思っていましたが、栄養のバランスが崩れていたのです。子供が学校から帰っての第一声が「お母さん寝てた」の言葉で、今考えると情けないものでした。
今回は違っていました。教室では外見でなく中身の問題だったのです。それに考えが同じで、一緒に頑張れる仲間がいたことです。
私の生活の変化の第一は「ご飯はしっかりかんで、ゆっくり食べる」。慣れるまで、目の前に目覚まし時計を置いて、まず10分を目標に始めました。今では時計なしでも30分はかけられるようになり、早食いのときより食べる量が減りました。今は野菜、キノコ、海藻はしっかり食べて、肉や魚は決められた量だけ。1日30品目に近づけるよう努力しています。
●歩いて季節感肌に
また、運動は1日60分間歩くことを心掛けています。どこへ行くにも基本は歩くことです。銀行は20分かかる所へ、買い物も西新まで30分強、天神は1時間10数分で行けます。まず歩いて疲れたら無理をせず、そこから乗り物に乗るようにしています。
歩くと季節を肌で感じます。風の心地良さ、空気のおいしさ、路地には花が咲き、カキやミカンの実が青から黄色に変わる事。紅葉の美しさ、冬の日だまりに咲くスミレ。すべて歩いたから見つけられたことでした。今は主人と子供と4人で、歩く楽しみが増えました。
最もうれしかったのは、主人が5kg、娘は6.5kg、息子が2kgもやせることができたことです。私の作る食事が変わっただけで、3人は何の努力もしないで効果が出たのです。娘に言わせれば「お母さんの食生活が間違っていたので、私達が太ってた。」
●男性の10人に1人は…
糖尿病になると、まず尿に糖(尿糖)が出てきます。血糖が高くなり、腎臓での血糖閾値(いきち=血糖値170mg/dl)を超えると、尿の中に糖が出てくるのです。しかし、尿糖が出たからといって、糖尿病とは限りません。糖尿病は、血液中の糖(血糖)が高くなる病気です。
したがって、空腹時の血糖が高い場合には、75gのブドウ糖を経口摂取するブドウ糖負荷試験を行い、血糖値がどう変化するかを検査します。その結果、空腹時の血糖(静脈血漿)が140mg/dl以上、2時間値が200mg/dl以上を超える場合を糖尿病といいます。正常者では空腹時血糖が110mg/dl以下、1時間値は160mg/dl以下、2時間値が120mg/dl以下となり、正常値と糖尿病の間の値を示す場合を境界型糖尿病または耐糖能異常と言います。
現在、全国で糖尿病の患者さんは約600万人と推定され、40歳以上の男性の10人に1人は糖尿病と言われています。
●体質が受け継がれ
糖尿病には、免疫の異常やウイルス感染などが原因と言われている「インスリン依存型糖尿病」と、食事や運動不足などが密接にかかわりのある「インスリン非依存型糖尿病」があります。日本人に圧倒的に多く、中年以降に発症しやすいのは、後者のインスリン非依存型糖尿病で、最近では中学・高校生での発症も見られています。
インスリン依存型糖尿病は遺伝的なものはなく、インスリン非依存型糖尿病には、遺伝的な体質が関係していると言われています。これは、糖尿病が遺伝するのではありません。糖尿病になりやすい体質が受け継がれ、そこに、過食、運動不足、肥満、ストレスなどが加わって発症するのです。
食物を食べると、血糖値は上昇を始め、正常者では約30分後に最も高く、空腹時の約2倍にもなります。血糖が高くなり始めると、その血糖を細胞内に取り込んで利用したり、グリコーゲンとして蓄えるために、インスリンが膵臓から放出されます。その結果、2時間後にはほとんど空腹時と変わらない値に戻ります。
●血糖の高い状態続く
インスリン依存型糖尿病では、インスリンが膵臓から分泌されないのです。したがって、食事の前に食事の量に合わせたインスリンを注射しないと、高血糖になり糖尿病性昏睡を起こして危険なのです。糖尿病では、食後2時間後の血糖値が空腹時の血糖値に戻りきれなくて、決闘の高い状態が長く続きます。
その結果、細動脈硬化が進み、糖尿病性の網膜症、神経障害、腎症などが起こります。最近、糖尿病性腎症の増加が見られ、人工透析を受ける人の中に占める割合も高くなっています。
インスリン非依存型糖尿病では、インスリンの分泌はなされますが、インスリンの感受性が低下しているため、血中の糖を細胞に取り込みにくく、糖が利用される速度が遅いのです。その結果、高血糖が続きます。インスリンは細胞の扉を開けるカギの働きをしますが、特に肥満があるとカギ穴がつまっていてカギが開きにくくなっています。すなわちインスリン感受性が低下しているのです。
食をはじめとする生活環境の変化から肥満が増加し、成人病発症の因子となっています。今日では、どの成人病でも肥満の解消が治療の第一段階と考えられています。
このように減量には、規則正しい食事と運動、それに継続が大切なのです。
「のどが渇く」「よく水を飲むようになる」「尿の量や回数が多くなる」などの症状がみられたら、糖尿病の疑いがあるので医師の診断を受けましょう。