骨粗しょう症とは

骨折が生じやすくなる骨の病

昔話の老人は腰が曲がって描かれ、また高齢者は骨の粗しょう症化により、骨折が起こりやすいことが知られています。骨の変化や粗しょう化は白髪化や視力の低下と同様な老化現象と言えます。しかし、腰痛や骨折は高齢者のクオリティー・オブ・ライフ(生活の質)を著しく損なわせることから、白髪化などとは異なり“疾患"とされています。

● 80%以上が女性

近年、高齢者人口が増加するとともに骨粗しょう症の患者も増え人口の約9%にも達し、その80%以上が女性ということは、特筆する必要があります。老人の骨折は医療、福祉の面で大きな問題となり関心が高まっています。

骨粗しょう症は、治療が困難なため予防が重要です。若いときから食事と運動で丈夫な骨を作ることが転ばぬ先の杖と言えましょう。

骨はコラーゲンから成る基質にカルシウムとリンの結晶(骨塩)が沈着してできています。一般に骨組織の骨量減少を骨減少症と呼び、骨粗しょう症というのは骨減少症の中で、気質と骨塩の比が一定のまま、つまり骨の化学的組成は変わらないで、骨量が病的に減少した状態のものです。簡単には「骨粗しょう症は骨量が低下し、骨折を生じやすい病態にいたる骨の病」と言えます。

しかし骨塩量はバラツキが大きく、腰痛がなく健常と考えている女性で骨塩量が著しく低下していたり、高齢者の全部がスカスカの骨になっていたりしているわけではありません。

● カルシウムの働き

骨は他の組織と同じように常に新陳代謝され、分解と再構築が行われ、絶えず入れ替わっています。骨の新陳代謝は骨を溶解して吸収する破骨細胞と、骨を形成する骨芽細胞により通常、バランスよく行われています。

健常な人の血液100ml中のカルシウム濃度は、約10mgでホルモンにより一定に維持されています。これに対して細胞内濃度は、その1000分の1から10000分の1の濃度です。カルシウムは筋肉の収縮や細胞内の酵素活性調節物質として非常に重要なイオンで血液と細胞内の濃度を一定に保ち生体の営みにかかわっています。

生物が発生したカンブリア紀の海のイオンと、その濃度は細胞内のものに近いことが知られています。その後、海水にナトリウム、カルシウムが増えてきますと、多細胞生物では、その海水イオン分布に近いものを細胞外イオンとして環境に合わせて生活してきました。

また生物体内に取り込まれたカルシウムは、説けにくいリン酸カルシウムとして沈着させ骨とし、貝類では炭酸カルシウムとして殻にしました。

● 骨はカルシウム貯蔵庫

生物が陸に上がり生活するようになって、カルシウムが容易に得られない時、カルシウムの貯蔵庫の骨から溶かし血液に補い、また骨に蓄え、常時、入れ替えを行っています。骨、細胞外、細胞内の分布の調節には3種のホルモンが働いています。これらは活性型ビタミンD(ビタミンDから肝臓と腎臓でつくられるホルモン)、副甲状腺ホルモン(PTH)、甲状腺ホルモンのカルシトニンです。

年を取ると活性型ビタミンDの生成能が低下し、カルシウムの腸からの吸収や骨形成能が低下します。

女性ホルモンのエストロゲンは、骨からのカルシウムが抜けていく反応(骨吸収)に働くPTHの作用を抑制します。閉経後にはこのエストロゲンが少なくなり、骨からのカルシウムの逸脱が急速に進み、閉経後骨粗しょう症(II型)が起こります。

老人性骨粗しょう症(II型)では加齢とともにホルモンのバランスが崩れ、骨の分解と合成の両方が低下し骨量が減少します。タイプ。では、椎体骨骨折が起こりやすいのに対してタイプIIでは、大腿骨骨折がしばしば起こります。

骨粗しょう症の予防

若い時からのカルシウムを十分にとる

骨粗しょう症の危険因子として、生理的、遺伝的、生活習慣などが要因に挙げられています。女性では、閉経、加齢は重要な危険因子です。しかし加齢や閉経は変えられないものなので、食生活(カルシウム、ビタミンDの摂取)や運動などの生活習慣上の要因による予防が大切と言えます。

●薬剤での改善困難

女性ホルモンのエストロゲンは、治療薬として国際的に受け入れられていますが、女性の閉経後の限定された期間にしか有効でなく、最近、乳がん、子宮がんの発症の危険が明らかになり、使用は慎重にとの動きもあります。甲状腺ホルモンのカルシトニンはヨーロッパで用いられていますが、注射による連続投与が必要で簡単には使えません。

年を取ると、ビタミンDを活性型にかえる腎臓での機能が低下し、カルシウムの吸収が悪くなるのに対して日本では治療薬として活性型ビタミンDが用いられています。しかし、使用については問題があります。

カルシウムの摂取が、一日600mg程度では障害は少ないのですが、大量にカルシウムを摂取している場合、腎機能障害が起こり、アメリカでは治療薬として受け入れられていません。

治療薬の開発が盛んに検討されていますが、まだ実用化には至っていません。いったん、骨量が骨折閾値(いきち=限界域)以下になってしまうと薬剤での改善は困難です。そこで若い時からカルシウムを十分取り、骨を大きく丈夫にし、また運動をし平衡感覚や筋肉を鍛え、転ばない身体づくりが大切です。

腸管からのカルシウムの吸収は加齢と共に低下し、老人では糞便中に出ていくカルシウム量は増加するのでカルシウムの平衡維持量が若者で10mg/kg体重/日であるのに対し、老人では14-18mg/kg体重/日となります。

●カルシウムの吸収率高い乳製品

厚生省の国民栄養調査によると、成人の平均摂取量は勧告されている所要量の600mgに達していません。老人では、平衡量から算定するとカルシウム所要量は900mg-1000mgとなりますが、食習慣を考えるとこれだけの量を食事からとるのは困難なため、成人と同じ値にしていますが、明らかに不足しています、

山梨医科大学の調査報告によるとカルシウム、ビタミンDの摂取量と骨塩量との相関は認められてません。しかし乳製品の摂取頻度が高いほど骨塩量が多い傾向が認められています。

カルシウムは遊離イオンとして腸管から吸収されます。牛乳中のカルシウムはタンパク質に結合していて、消化の過程で遊離されやすく吸収率は高い(80%程度)。一方、植物性食品のカルシウムはシュウ酸カルシウムのように有機酸と結合し、胃、腸で溶けにくいので吸収率は非常に低くなります。

食品中の全カルシウム量で摂取量を表すだけでなく、どの食品群からどのくらい摂取したらよいかの配慮が大切です。ビタミンDの摂取も大切ですが日本では十分取っているので特に注意はいりません。

●筋肉鍛え骨づくり

カルシウム含量の多い食品を表に示しました。一日600mgを取るとすると@牛乳200ml、または脱脂粉乳20gかヨーグルト150gかチーズ20gA煮干し10g、または丸干しいわし100gB豆腐100gC有色野菜100gを目安として摂取すれば充足します。老人は乳製品の摂取が少ないので、意識的に心がけなければ充足は困難です。

運動能力テストの結果および1日の運動量と骨塩量との関係は認められていません。しかし無重力状態や、ベッドに体を固定した状態を長く続けると、足の筋肉が衰え骨塩量も減少します。年齢に応じた適度な運動が必要です。体重が重く、太めの体型ほど骨塩量が多く、小柄でやせ型は少ないことがわかっています。若い時から運動で筋肉を鍛え、丈夫な骨を十分に作っておこましょう。

鉄欠乏性貧血とは

女性に多く、主な原因は小食や偏食

私たちの身体には成人男子で約4g、女子で約3gの鉄が含まれています。その約3分の2は赤血球中の酸素を運搬するヘモグロビンにあります。残りはフェリチンやヘモジデリンなどの貯蔵鉄や筋肉のミオグロビンに含まれています。しかしヘモグロビン中の鉄は量的に最も多く、また代謝が速いため食事からの鉄の摂取量が不足するとヘモグロビンが作られなくなり、鉄欠乏性貧血が起こります。

●食品中の鉄の吸収

鉄は主に腸粘膜の剥離や、皮膚、汗から成人男子で1日当たり1mgが失われ、これを基本的鉄損失といいます。閉経前の女性では月経期間中に1日平均0.8-1.5mgの鉄が出血により失われます。

鉄の吸収率は、一般に低く加重平均として10%とされていますので、基本的損失量の1日1mgを補うには男性で10mg、女性では月経時の損失量を合わせ12mgを食品中から摂取しなければなりません。女性は男性より鉄が欠乏しがちとなり鉄欠乏性貧血を起こします。

オーストラリアの鉄鉱山の露天掘りで見られるように、地球の鉱物として鉄は量、分布ともに多い物質です。それにもかかわらず、私たちの身体にはわずかしか含まれておらず、また食品からの吸収率が低いのには理由があります。

空気中の酸素分子は私たちの身体成分を直接、酸化することはありませんが、エネルギー代謝や生体での酸化反応により酸素は還元され、活性酸素になりますと細胞に種々の障害(細胞構造の崩壊、コラーゲン化、核酸構造の変化など)を与えます。鉄は遊離の状態で生体に障害を起こす活性酸素の生成を高めますので、体内で鉄は血中のトランスフェリンや、貯蔵体のフェリチン、ヘモジデリンのようにタンパク質と結合して存在しています。鉄結合タンパク質には限りがあり、鉄の大量の貯蔵はできません。

●鉄の吸収

鉄は上部小腸の腸粘膜から還元型鉄として取り込まれますので、アスコルビン酸(ビタミンC)のように酸化鉄を還元鉄にするものは吸収を高めます。お茶のタンニンや植物のフィチン酸、シュウ酸は鉄と結合し、水に難溶性の鉄化合物をつくるため吸収を悪くします。

腸粘膜に取り込まれた鉄は鉄結合性タンパク質に結合し、トランスフェリンに鉄が結合し飽和されると、鉄の吸収率は低くなります。

鉄結合性タンパク質への鉄飽和度、体内の鉄貯蔵量は吸収率とは逆相関しています。このように、過度の鉄が体内に入らないような仕組みで調節されてることが鉄の吸収の特徴です。

●症状は徐々に進行

出血でヘモグロビンの鉄が失われると、体内に余分が少ないので鉄欠乏性貧血が起こります。鉄の充足状態を表す指標として血液100ml中のヘモグロビン量が12g以下、血清1ml中のフェリチン量が12ng以下を鉄欠乏性貧血と診断しています。

貧血共通の症状が表れ、顔色、眼瞼(けん)結膜が蒼白となり、疲れやすく、運動すると心悸(き)亢進、目まいを起こします。鉄欠乏症は徐々に進むので見逃しがちです。

経済的先進国を含め世界的に若い女性の鉄欠乏性貧血は非常に多く、日本では約10%に見られ、先の診断値のボーダーラインの潜在性のものを加えると20%に近い状況にあります。主な原因は小食、偏食による鉄摂取量の不足によります。

一方、高齢者に見られる貧血は、造血細胞の鉄貯蔵量の減少によるもので、鉄の摂取量を増やすだけでは治療されません。

鉄不足と食生活

鉄分の摂取量は食事の量と比例する

平成5年度の国民栄養調査の結果では、国民1人当たりの鉄の摂取量は、平均12mg、摂取率104%でした。日本人の鉄摂取量は平均的には比較的良いレベルにありますが、最近の若い女性の中にはかなり多くの鉄不足が見られます。太り過ぎを気にして食事の量を減らしたり、朝食を欠かすことに起因しています。

●魚介や肉類にヘム鉄(右図は鉄の多い食品)

吉野芳夫教授(昭和女子大学大学院)らの調査によると、青年期の女子の鉄摂取量が、所要量の12mgに達していない人が80%を越えていました。また、鉄需要の増す妊婦では、母体の鉄が胎児や胎盤へ優先的に移行するため鉄欠乏が多くなります。

食品に含まれる鉄には、ヘム鉄と非ヘム鉄があります。ヘム鉄とは、ヘモグロビン、ミオグロビンヘム酵素に由来する鉄で獣鳥肉類や魚類に多く含まれており、それらの鉄の40%がヘム鉄であると言われています。

非ヘム鉄は、野菜や穀物、芋類、豆類、卵や牛乳・乳製品などに含まれている鉄です。さらに、動物性食品のヘム鉄以外の鉄もこれにあたります。食物から摂取される鉄の90%が非ヘム鉄と考えられます。

ヘム鉄は非ヘム鉄に比べて腸管吸収率が高く、体内の利用性に優れていることがわかっています。

●ビタミンCが鉄の吸収促進

モンセン博士(アメリカ)らによる報告(1978年)=表参照=では、体内貯蔵鉄量のレベルごとにヘム鉄、非ヘム鉄の吸収率が異なっています。特に、非ヘム鉄の吸収率は、共存する食品中のほかの成分によって、著しく影響を受けることを示しています。

つまり、表にあるように赤身の肉や魚、ビタミンCは、吸収促進因子であろことがわかります。食品中の非ヘム鉄は通常三価鉄で、そのままでは吸収されません。ビタミンCの還元作用で吸収の良い二価鉄にかえることができます。そのほかにクエン酸や乳酸などの有機酸も鉄の吸収を促進します。

一方、お茶に含まれたタンニン酸や穀物中のフィチン酸、食物繊維などの鉄吸収阻害因子の存在も忘れてはなりません。

では、どのような食事をすればよいでしょうか。鉄分を多く含む食品は、肉類、卵、魚介類、豆・豆製品、青菜、海藻などがあります。それらのいろいろな食品を、それぞれの一定量をバランスよく計画的に食卓にのせることが、鉄分を十分に摂取するためのポイントになります。

●しっかりした食事で鉄分を十分に

鉄分摂取量は、食事の量と比例します。

食生活の簡便化、インスタント化や加工食品依存の頻度が高くなると、鉄は不足がちになります。私たちの調査では、食べ方を構造的(食物消費構造といいます)に見たとき、鉄欠乏性貧血の人は間食的な食べ方をしています。そうでない人は、しっかりした食事をしています。

食事の基本は、「主食、主菜、副菜」に汁物や果物、適量の牛乳に加え、さらに味のバランスを考慮して組み合わせることです。主食の量は、総エネルギーの50%程度を目安にします。

例えば、1600kcalの人の場合、約800kcalを主食で摂取します。米で摂取すれば約230gになります。主菜は主に動物性タンパク質性食品で取ります。同じ肉や魚介類でも“赤身"のものはヘム鉄が多く、計画的に摂取してほしいものです。同時に、鉄を効率よく利用するために、ビタミンCなどを多く含む副菜や果物などの上手な取り方を工夫することが大切です。

一回の食事中の鉄吸収量

貯蔵鉄量(mg)

0 250 500 1000

ヘム鉄(%)

35 28 23 15




%
鉄の利用が低率の食事
@肉または魚(赤身、生)<30gまたは
AビタミンC<25mg
5 4 3 2
鉄の中等度利用食
@肉または魚(赤身、生)30-90 gまたは
AビタミンC25-75 mg
10 7 5 3
鉄の高度利用食
@肉または魚(赤身、生)> 90 gまたは
AビタミンC> 75 mgまたは
B肉または魚30-90 g+ビタミンC25-75 mg
20 12 8 4